LE VELVETSの真骨頂、15周年記念フルオーケストラコンサートルポ、京都公演は4月1日開催 | アイデアニュース

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LE VELVETSの真骨頂、15周年記念フルオーケストラコンサートルポ、京都公演は4月1日開催

筆者: 村岡侑紀 更新日: 2023年3月23日

2023年3月17日(金)に、東京芸術劇場コンサートホールで、billboard classics LE VELVETS 15th ANNIVERSARY Premium Symphonic Concert 2023が開催されました。結成15周年を迎えたヴォーカル・グループ「LE VELVETS(ル ヴェルヴェッツ)」の歌声が、指揮者・柴田真郁さん率いる東京フィルハーモニー交響楽団の演奏と共に、格調高く響いた一夜の様子をお届けします。このコンサートは4月1日(土)に、京都コンサートホールでも開催されます。(billboard classics公式YouTubeで、東京公演当日の「誰も寝てはならぬ」一部音源が公開されています。)

(左から)宮原浩暢さん、日野真一郎さん、佐藤隆紀さん、佐賀龍彦さん
(左から)宮原浩暢さん、日野真一郎さん、佐藤隆紀さん、佐賀龍彦さん
billboard classics公式YouTube:コンサート当日のLE VELVETS「誰も寝てはならぬ」一部音源公開中

■バリエーション豊かなハーモニー。「’O SOLE MIO」「帰れソレントへ」「誰も寝てはならぬ」「乾杯の歌」

コンサートの第一部では、カンツォーネとアリアを中心に構成されたクラシカルな世界が展開されます。日本最古のオーケストラ・東京フィルハーモニー交響楽団による、スッぺ作曲のオペレッタ『軽騎兵』序曲で開幕。トランペットのファンファーレが華やかに開幕を告げ、ホールがアニバーサリーコンサートらしい祝祭感に包まれ、心躍らせる観客の前に、LE VELVETSの4人が登場します。

1曲目は、ナポリの輝く太陽に愛する人を重ね「私の太陽」と歌うカンツォーネの名曲「’O SOLE MIO」。15年前のデビュー当時、路上ライブを行っていた頃から様々にアレンジを変えながら、彼らが歌い続けている一曲です。テノールの日野真一郎さん、バリトンの宮原浩暢さん、テノールの佐藤隆紀さん、佐賀龍彦さんの順にソロが続くので、まずそれぞれの声の魅力を感じることができます。この曲の聴きどころの一つとなっている佐藤さんのロングトーンが登場するのは、2番の冒頭。明るく陽気なロングトーンを受け、再び歌の世界を進める役割を佐賀さんが担い、その後、2人、3人と声が重なり、4人フルのハーモニーへと、彼らのハーモニーのバリエーションが様々に表れます。フルオーケストラと4人、それぞれのハーモニーが呼応しながら情熱がクレッシェンドで高揚していきます。

2曲目はカンツォーネ「帰れソレントへ」。「日野さんの軽やかなテノールと宮原さんの重みあるバリトン」と「佐藤さんのやや低めのまろやかなテノールと佐賀さんの突き抜けるような高音テノール」の組み合わせが交互に登場し、ハーモニーのバリエーションを楽しめます。ラストは、3人のドラマティックなハーモニーの中、佐賀さんの歌声がリリカルに。オーケストラの深みのある音が歌声と溶け合い、歌詞に描かれている、恋破れた男性の失意の叫びが、残酷なほど美しくソレントの街に響きわたります。

3曲目は、プッチーニのオペラ『トゥーランドット』より「誰も寝てはならぬ」。トゥーランドットとは、中国の姫の名前で、この曲では「彼女の愛を勝ち取るのだ」というカラフ王子の決意が歌われます。佐藤さんと宮原さんの声がまず世界観を作り、そこに佐賀さんと日野さんの声が、アクセントとして映える構成になっており、とてもLE VELVETSらしい1曲です。

フルオーケストラの前奏により、オペラのワンシーンが登場したような重厚感の中、まず佐藤さん、日野さん、宮原さんの声が「Nessun dorma!」と反復しながら重なります。この反復により、姫の命令に抑圧された空気が広がる中、「自分こそが」と夜の静寂を打ち破り、カラフの確信を提示するように入るのが、佐賀さんの声。次いで、佐藤さんの重々しいテノールに、宮原さんの深いバリトンが登場し、カラフの心を歌い上げます。日野さんは、冒頭の「Nessun dorma!」ではテノールとして、オペラで上演される際には本来コーラスで歌われる「民衆の声」の部分では、ファルセットで登場します。カラフという一人の人物の心境が3人の異なる声質で描かれ、シーンそのものを日野さんが1人独立した歌声で表現しているように思えて、とてもドラマティックな面白さを感じました。

(左から)宮原浩暢さん、佐藤隆紀さん、佐賀龍彦さん、日野真一郎さん
(左から)宮原浩暢さん、佐藤隆紀さん、佐賀龍彦さん、日野真一郎さん

■クラシックのルーツとミュージカルで培った表現力が融合。マイクなしのソロ曲

4曲目から7曲目では、メンバーそれぞれのソロ曲が続きます。ソロ曲は、事前に彼らが語っていた通り「マイクを外して」の歌唱でした。LE VELVETSのメンバーは、全員が音楽大学の声楽科を卒業しています。グループとしてはクラシカル・クロスオーバーをコンセプトに活動しており、ミュージカル曲における表現も含め、普段は「マイクならでは」の繊細な表現がメインとなりますが、このコーナーでは、声楽家としての彼ら自身の声の響きをダイレクトに楽しめます。更に、今回のコンサートはフルオーケストラとの共演となるため、例えばアリアの場合は、オペラの中で演奏される状態に近い形で聴くことができるのです。彼らにとって、原点回帰でもある歌唱法の中に、ミュージカル出演の経験など、15年間で得たあらゆる表現方法が込められているこの企画は、今回のコンサートならではの、とても貴重な機会となります。

■崇高で清らか。光を思わせる日野さんのファルセット「私を泣かせてください」

ソロコーナーの1曲目は、日野さんによる「私を泣かせてください」です。17世紀に作られたヘンデルのオペラ『リナルド』からの1曲で、敵国に連れて行かれた女性アルミレーナが求婚を拒絶し、婚約者のリナルドを想うシーンで、「ただ自由が欲しい。苛酷な運命に涙を」とソプラノで歌います。MCとパンフレットの説明によると、音楽大学の学生であれば、歌曲集に掲載されていることもあり、非常にメジャーな曲であるそうで、日野さんご自身も、学生時代からテノールの音域で歌っていたとのこと。映画「カストラート」で使用されていた歌声に惹かれ、その表現を目指し、ご自身のレパートリーにされたようです。日野さんの崇高で清らかなファルセットが切々と響き、アルミレーナの凛とした美しい姿が浮かびました。声に、真珠のような涙を感じます。歌声が天上に真っ直ぐに届き、神聖な光となって降り注ぐような感覚が印象的でした。

■情熱が甘く胸に迫り、力強くうねるように響く宮原さんのバリトン「闘牛士の歌」

2曲目は、宮原さんによる「闘牛士の歌」。19世紀に作られたビゼーのオペラ『カルメン』からの1曲です。闘牛士・エスカミーリョが、闘牛士の勇姿を描写しつつ、「黒い瞳がお前を見ている」と、恋への情熱を酒場で歌うシーンです。実はこの曲、学生時代にも宮原さんは東京芸術劇場のコンサートホールでソロで歌った経験があるそうです。パンフレットでは、「超高音があるわけではないので、狭い音域の中でどこまで深い響きを作ることができるか」と聴きどころが説明されています。宮原さんのエスカミーリョは、佇まいや華麗な身のこなしも、さながら堂々とした闘牛士。野生味の混じる戦闘性も魅力的です。オーケストラの迫力の中、情熱が甘く胸に迫る力強いバリトンが、闘牛で使われる赤い布がひらりと舞うように、うねるように響きました。

■オーケストラが音で描いた土地に、一途な情熱を響かせる佐賀さんのテノール「グラナダ」

3曲目は、佐賀さんによる「グラナダ」。メキシコ人のララによって20世紀に作曲された歌です。ララは、実際にグラナダを訪れる前にこの曲を書いています。歌詞には、何度も「グラナダ」と呼びかける箇所があり、女性に擬人化された土地への情熱が高らかに歌い上げられます。太陽、バラ、闘牛、ジプシー、女たち。歌詞に登場する名詞をランダムに並べただけでも、情景が浮かぶ絵画的な曲です。パンフレットには、「オーケストラは、演奏者一人一人の音楽性が一つになって向かってくる。この曲のスケール感をさらに感じていただけるのでは」と、佐賀さんの言葉が記されています。その言葉の如く、オーケストラの音が画家の絵筆のように土地・グラナダを描き出しました。そこに、佐賀さんの一途に情熱的なテノールが伸びやかに高く、時にゆったりと柔らかに響きます。音の高低やテンポの中に、「グラナダ」に投影された女性を時に熱烈に、時に愛おしく見つめているかのような一人の男性の物語にもなっていました。

■情感豊かに、甘美さが悲壮感を加速させる佐藤さんのテノール「衣装をつけろ」

4曲目は、佐藤さんによる「衣装をつけろ」。19世紀に作られたレオンカヴァッロのオペラ『道化師』の中で、道化師カニオが歌うアリアです。妻の浮気を知ったカニオが、「それでも衣装をつけて、観客を笑わせよう。自分は道化師なのだから」と、己の運命を嘲笑いながらも顔を白塗りし、舞台に出る準備をするシーン。夫としてのカニオと、道化師としての彼。二つの個が、悲しみと怒りという感情そのものとして、一人の人物の中で激しく渦巻きます。佐藤さんがこの曲に出会ったのは、学生時代。ジュゼッペ・ジャコミーニの生演奏への思い入れなどを込めつつ、今回初めて人前で披露されました。乾いた笑いに、白塗りするシーンで見せた背中の哀しみ。2019年のミュージカル「レ・ミゼラブル」からジャン・ヴァルジャン役を務めている佐藤さんならではの情感豊かな芝居に、色濃く影が落とされたテノールが甘美に響き、この後の悲劇を予感させます。その声は、レコードでよく聴いていたマリオ・デル・モナコや三大テノールの歌唱を思い起こさせます。

(左から)宮原浩暢さん、佐藤隆紀さん、日野真一郎さん、佐賀龍彦さん
(左から)宮原浩暢さん、佐藤隆紀さん、日野真一郎さん、佐賀龍彦さん

ソロコーナーが終わり、第一部の最後を飾るのは、ヴェルディ作曲のオペラ「椿姫」より「乾杯の歌」です。佐藤さんのアルフレード役と、日野さんのファルセットによるヴィオレッタ役が、軽やかに弾む声で乾杯の喜びを歌います。そこに出席客の靴音、ドレスの衣擦れ、談笑の声を思わせる、宮原さんと佐賀さんの声の厚みが加わり、オーケストラのゴージャスな演奏と共に、祝祭ムードは再び最高潮に達し、歓喜の中、幕となります。

■15年間の集大成。1つのグループと4人のアーティストとしてのLE VELVETS

第二部では、クラシカル・クロスオーバーの名曲とミュージカル楽曲の多彩な物語の世界へといざなわれます。オーディションを経てのグループ結成から15年。路上ライブからスタートし、足を止める人々の反応を肌で感じながら、それぞれのプライドや個性のせめぎ合いの中で生み出されたハーモニーが、15年の集大成として提示されるコンサートです。

第一部は、彼らが学生時代に学んできたことがベースとなっているとするならば、第二部は、LE VELVETSとしてグループ活動をスタートし、グループとして磨いてきた表現であり、そして、ミュージカルへの出演を通して、時に自分自身と戦いながら、個々に切り開いてきた姿を感じられる時間であるとも言えるでしょう。LE VELVETSという一つのグループとして、そして、宮原浩暢、佐賀龍彦、日野真一郎、佐藤隆紀という一人一人のアーティストや俳優としての、渾身の表現で、一つのミュージカル作品を、それぞれ舞台上に展開してくれます。繊細で緻密、時に大胆な表現力で展開される、様々な表情に圧倒されます。

「LE VELVETSらしさ」とは、もちろん唯一無二のハーモニーなのだと思いますが、決して一朝一夕に確立されたものではなく、一人一人の、そしてグループとしての15年間という時間がそこに流れているのだということ。だからこそ唯一無二なのだと。第二部ラストを飾る「民衆の歌」(ミュージカル『レ・ミゼラブル』より)の響きの中に彼らの絆を感じました。

このコンサートは4月1日(土)に、京都コンサートホールでも開催されます。柴田さん率いる、京都フィル・ビルボードクラシックスオーケストラとの共演となります。LE VELVETSのコンサートでは、クラシカルクロスオーバー、クラシック、ミュージカルを中心に、ポップスや民謡、映画音楽など、様々な音楽をいつも楽しめますが、フルオーケストラとの共演、そして、マイクなしのソロ歌唱を聴くことができるのは、今回ならではの貴重な機会。クラシックファンも、ミュージカルファンも楽しめる構成になっています。

15周年の新たな企画として、5月から6月にかけて、東京・愛知・静岡・埼玉・神奈川・大阪・兵庫の7都市で春ツアー「LE VELVETS CONCERT TOUR 2023 Because of you〜15th Anniversary〜」の開催も発表されています。このツアーも、その先も、今回のコンサートを経ての新たなLE VELVETSに期待が高まります。

<billboard classics LE VELVETS 15th ANNIVERSARY Premium Symphonic Concert 2023>
【東京公演】2023年3月17日(金) 東京芸術劇場 コンサートホール(※東京公演終了)
【京都公演】2023年4月1日(土) 京都コンサートホール 大ホール(※S席完売)
公式サイト
https://billboard-cc.com/classics/levelvets2023/

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<筆者プロフィール>村岡侑紀(むらおか・ゆき) 広告制作会社に入社し、企業ブランディングやコピーライティングを経験。その後、化粧品メーカーのマーケティング担当として多くのブランドを育成し、ベンチャー企業で広報も。ミュージカルや舞台作品そのものの魅力はもちろん、そこに携わる方々のことを伝えたい。 ⇒村岡侑紀さんの記事一覧はこちら

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最近のコメント

  1. kinkonkan より:

    素晴らしいレポートをありがとうございます。当日の様子がよみがえりました。「Nessun dorma」の公開音源を聞くと、佐賀さんが戻ってきた嬉しさが実感できて涙が出てきました。

  2. かこ より:

    オーケストラと響き合って格好良さと優雅さ、力強さが上手くミックスされ、時にコミカルに時に妖艶に時に悲哀を纏って繰り広げられるこのコンサートが映像化されないかと切に願っています

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