舞台『鋼の錬金術師』―それぞれの戦場(いくさば)― が、2024年6月8日(土)から6月16日(日)まで、東京・日本青年館ホール、6月29日(土)から6月30日(日)まで、大阪・SkyシアターMBSで上演されます。
コミックスは全世界シリーズ累計部数8,000万部超え、テレビアニメ、アニメ映画、ゲーム、実写映画と数々のメディアミックスを繰り広げ、連載20周年を迎えた昨年3月、舞台『鋼の錬金術師』初上演では、脚本・演出の石丸さち子さんのもと、多様なジャンルのエンターテイメントで活躍するクリエイターとキャストが集結し、舞台効果と俳優の身体表現の限りを尽くした演出、原作から飛び出してきたようなリアルなキャラクタービジュアル、物語を劇的にいざなう生バンドによる演奏が大きな話題を呼びました。
待望の第二弾では、主演のエドワード・エルリックを一色洋平さん/廣野凌大さんがダブルキャストで続投。エルリック兄弟の旅は続いていきます。
アイデアニュースでは、エドワード・エルリックを演じる一色さん、廣野さん、演出家の石丸さんにインタビューしました。インタビューは「上」「下」に分けて、同時公開します。
――第一弾での手応えや印象深かったこと、どのような思いを抱かれていたかなどをお聞かせ願えますか。
一色:原作ファンの方にも、すごく喜んでいただけた印象がありました。客席にエドのコスプレをしている男の子が来てくれたり、男性のお客さまもすごく多くて、海外の方もいらっしゃいましたし。
廣野:いましたね。
一色:いろんな客席が見えて面白かったなと。あとは、演劇関係者の方から「舞台版として完成していた」と言われたのが、すごく嬉しくて励みになりました。第一弾ではエンヴィーというキャラクターが電話ボックスを回す演出があったのですが、それにも実はとっても意味があって。そういった「こちらが意図して作ったもの」が、お客さまにもありありと伝わったという実感がありました。ひとつずつすべてのことにこだわって「舞台」として立ち上げた3時間という長尺の芝居が、お客さまと演劇関係者の皆さんにも伝わったというのは、強い手応えでした。あと、東京初日に「荒川先生と一緒に観劇した日」が、忘れがたい「空間」でしたね。
――原作の荒川弘先生が観劇されたんですね。
一色:僕は直接はお会いしていなくて「どこかに荒川先生が座っているんだろうな」という感じだったんです。一番後ろの席から「あの人が先生かな?」って探しながら(笑)。今この空間に「鋼の錬金術師」を生み出した荒川先生と一緒に居て、そして一緒に舞台『ハガレン』を観ているというのは、今話していてもちょっと鳥肌が立つくらい。あの劇場の空気は忘れられないです。
――廣野さんはいかがでしたか?
廣野:こんなにしんどいことを「やってよかった」と思えることは、人生でもあまりないというか……。「ハガレン」は「等価交換」の話でもあるし、そういう「錬金術」の話ではあるんですけど、本当に自分が悩んできたもの、キャラに向き合ってきた分だけ「返ってくる」ための環境を、さち子さんやスタッフさんが作ってくれたなと思いました。初日から千穐楽までずっとそうだったんですけど、お客さまの前で演じたときに、それがちゃんと「等価交換」で返ってくるというか、自分のしんどさが報われる瞬間を痛烈に感じて。自分の中を駆け抜けていったあの感覚は忘れられないです。 第一弾 の千穐楽は僕だったんですけど、カーテンコールで洋平さん含めたWキャストメンバーとさち子さんに壇上に上がってもらって、みんなでマイクを分け合って喋ったり。なんかそういういい思い出があるんですけど。
一色:うんうん。
廣野:自分の人生の中で「忘れられない瞬間になった」というのが手応えです。やっぱりその分、この1年評判が良くて。
一色:それは凌ちゃん個人のこと?
廣野:はい。ありがたいことに舞台『ハガレン』の力を借りて、1年間評判良いままやってこれました。僕に「芝居の中の言葉の大切さ」を教えてくれたのは、間違いなくさち子さんです。今回もよくさち子さんから「匂い立つ言葉」、つまり本当の感情が、その環境が匂ってくるような、というオーダーがでるんですけど、僕はまだそれに応えきれていないと思っていて。ただ、自分の中でそれをつかみかけてきた、役者としてその片鱗を感じることができた、僕の役者人生にとってすごく大事な作品なので、今回も全力で取り組んでいます。
――石丸さんは、 第一弾 に関していかがでしたか?
石丸:エルリック兄弟の人生は「当たり前な人生」ではないんです。まだ10歳、11歳で、父の書斎に残された本だけを頼りに「人体錬成」をしています。科学的な事柄を誰に教えられるでもなく勉強をして、そのことに必要な体力をつけて、心身を磨き上げていくんです。それはどういう一念かというと「お母さんにもう一度会いたい」から。普通は大人から「人体錬成」という禁忌を犯しちゃいけないと教わって、やっちゃいけないことだと育てられるんですが、この父と母を失った子供たちは「会いたいものには会いたい」という愛情由縁の力でそれを実行してしまう。そして、世の中の力の有り様みたいなものを師匠のイズミから教わって、母に会いたいがために、あらゆることに驚くべき進化を見せていくんです。でも母親の人体錬成を実現したときには、もう一生取り返しのつかないような後悔を覚えるという、幼い少年にとっては、とんでもない経験です。
そこから自分たちの体を「賢者の石」を使って取り戻す旅に出るんですが、やっぱり人との関わり方も未熟なので、愛して傷ついて、守ろうとして守れなくて、自分の人生を生きようとしていたら意図せず誰かを傷つけ喪失して、ということを繰り返します。その中でお互い兄弟であるということがずっと支えになって、たくましく生きていく。これはよほどタフな俳優じゃないとできません。だから第一弾で、この2人(一色さん・廣野さん)を「エドワード・エルリック」に選んだことは、私の功績だと思っているんです(笑)。
廣野:その通りです!
石丸・一色:(笑)。
石丸:第一弾で、2人がちゃんと各々の「エドワード・エルリック」を確立してくれたという手応えがありましたけれど、お客さまがそれを認めてくださったというのがまた大きくて。そして「この2人の旅の続きを見たい」と願ってくださったのもお客さまだったので、この第二弾に繋がりました。それに応えなければと思っています。
――「エドワード・エルリック」役はタフな俳優じゃないとできないというのは、フィジカルはもちろん、メンタルもでしょうか。
石丸:そうです。メンタルが初めから強い人はそうそういない。私が2人と出会ったときに感じたのは、2人とも愛する力も憎悪する力も強くて、2人とも欲望が深いということでした。その欲望の深さが、やっぱり「エド」に向いていると思ったんです。
――「欲望の深さ」というのは?
石丸:たとえば俳優である限り、1番になりたいし、誰よりも素敵でありたいし、「エドワード・エルリック」という素敵な役があるのなら「俺がやりたい!」と思うのは当然です。そのときに全く違うタイプの「俺にやらせろ!」を見せてきた感じですね。
廣野:たしかに。
石丸:2.5次元作品では、あまりダブルキャストはなかったと聞いていたんですけれど、そこに私が「いや、選べない。お願い、ダブルキャストにして」ってお願いしたんですよ。私にとっては、廣野が居ても一色が居ても、まだ「エドワード・エルリック」には足りないと思ったので、「この2人が力を合わせれば、エドワード・エルリックができるんじゃないか」と。普通ダブルキャストは、お互いに牽制し合ったりで、それこそ心の置き様が難しいものなんですが、この2人はなんだか素敵な関係性を保っていて。ちゃんとしっかりした「自我」があるんだと思います。傷つかない、傷つききらない自信というものが。それぞれの中に今まで俳優として、人間としてやってきた「俺様」がちゃんといるからでしょうね。
廣野:我が強いよね。
一色:うん、うん。
石丸:だからお互い上手いこと良いところは取り合って、そして自分にないところを補い合っていくうちに、ちゃんとそれぞれが一人前の、全く別々の「エドワード・エルリック」になった印象でしたね。
――お2人の「エドワード・エルリック」は、それぞれの個性を感じます。でも作品全体で観ると、間違いなくお2人とも「エド」として存在されているので、とてもゆたかな世界を見せていただいている多幸感がありました。
石丸:有り難うございます。ゆたかっていいよね!
一色・廣野:ゆたかっていいね!
―― 第一弾 が終わった時点で、第二弾は決まっていたのでしょうか?
石丸:やりたいと思っていましたが、世の中そう簡単に上手くいかないので、状況が整うかはまだわかっていなかったんです。みんな誰しも「約束の日」まで行こうと思っているんだけれど、でもいろんな条件が揃わないとそこに行けないので。力を合わせて、我々、それからお客さまの期待、いろんな状況を踏まえて「旅は続く!」と思って終わったよね。
廣野:うん。終わった。
石丸:「このまま終わるもんか」って。だって最後に「To be Continued」って出しちゃったもん(笑)。
一色:強気な「To be Continued」(笑)。
廣野:まだ決まってないけど(笑)。
石丸:そう、既成事実(笑)。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、漫画「鋼の錬金術師」を原作とした舞台を石丸さん、一色さん、廣野さんがどのようなことを考えながら作っているかについて伺ったインタビュー前半の全文を掲載しています(写真はありません)。「上」と同時公開のインタビュー「下」では、第一弾から第二弾の間に「エド」とどう向き合ったかと稽古場の写真、石丸さんは脚本執筆や演出の際にどのようなアプローチをされているのかになどについて伺った内容を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■一色:膨大な量の資料を調べたとしても、舞台上で「さておいて」等身大に演じられるか
■一色:目の前の生身の人間を一番大事に思えるかどうかが、勇気がいるけれど一番大事
■廣野:作り物の世界の中だからこそ、嘘を言っちゃいけない。本当の意味で「真人間」で
■廣野:「ありがとう、入ってきてくれて」っていう “エドが入る瞬間” があって
<舞台『鋼の錬金術師』―それぞれの戦場(いくさば)― >
【東京公演】日本青年館ホール 2024年6月8日(土)~6月16日(日)
【大阪公演】SkyシアターMBS 2024年6月29日(土)~6月30日(日)
公式サイト
https://stage-hagaren.jp/
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さち子さんが「選べない、ダブルキャストにして」ってお願いしてくれて、それを製作陣が叶えてくれて本当に良かったです。
片方だけだとまだエドには足りない、と思う所がなんとなく分かる気がします。両エドを観て続編・舞台ハガレンが自分の中で完成された感があったので。さち子さんの言葉は活字になっても時間が経ってもパワーが伝わってきて、本当にこの方が脚本書いてくれて良かったです!!!