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24時間全介助が必要な父を在宅介護、家族が倒れないためのスケジュール

筆者: 橋本正人 更新日: 2015年7月6日

 

事故で首の骨を折り、首から下が自分の意思では動かせなくなった父。その父を7年間、自宅で介護した経験から、介護を受ける人と介護する人の役に立つかもしれない情報を紹介しています。今回は、介護している家族が倒れないためのスケジュールづくりのご紹介です。

 

散歩中の転倒で首の骨を折り、頸椎損傷を負った父は、緊急手術をしていただいた病院からリハビリで定評のある病院に転院して間もなく半年がたとうとしていました。父にはぜひ自宅に戻ってほしかったのですが、手も足も動かせず、もちろん起き上がることもできず、食事から排泄まで24時間の全介助が必要な「障害者等級・第1級」の父を自宅で介護できるのかどうか。さまざまな壁がありましたが、介護している家族が倒れてしまっては、とても介護どころではないというのは、わかっていました。

 

父が倒れて入院している間、我が家には父の妻(私の母)と、私の妻、私の3人が暮らしていました。私は新聞記者として働いていましたので、かなり不規則な生活です。妻は英語講師として、あちこちの企業や大学などで教えていました。母はガンの手術をした直後で、耳が遠く、筆談でなければコミュニケーションをとるのが困難な状態でした。24時間「全介助」が必要な父が帰宅すれば、最も負担がかかるのは、母と妻であることは明白な状況でした。

 

事故で倒れる前の父と母と妻=撮影・橋本正人

事故で倒れる前の父と母と妻=撮影・橋本正人

 

本当に、父に自宅に戻ってきてもらえるのか。介護をしている人たちは、どんな生活をしているのか。私は、ネットであちこち検索しました。もちろん、介護疲れで無理心中したりするケースが多くあるのは知っています。ただ、うまく自宅介護ができているケースも、きっとあると思って、あちこち探しました。そして、「おっ、これは!」と思うケースを見つけました。

 

それはある大学教授が新聞に書いた記事でした。その教授は、妻を介護する必要があり、大学での仕事をつづけながら1人で妻を介護していました。その教授の話の中に「妻には、施設に週に1日か2日、泊まってもらった。妻が施設に行っている時間、私は自分の仕事をしたり、休んだりすることができた」と書かれていました。

 

調べてみると「ショートステイ」(短期入所生活介護)という仕組みで、老健施設(介護老人保健施設)などで、泊まることができるサービスがありました。この仕組みを使って、たとえば週に2泊3日でショートステイしてもらえれば、その連泊の間の1日は、丸ごと「介護の休日」となり、家族は買い物をしたり自分のために病院に通ったりすることができます。施設に送り出す日と、戻ってくる日は、どうしても半日ほどは拘束されますが、2泊の間の1日、朝から晩まで介護のことを考えなくて良い日が、週に1日ぐらいないと、家族はダウンしてしまうのではないかと考えました。

 

この「週に2泊3日のショートステイ利用」という仕組みには、大きな副産物がありました。同じ施設にずっとお世話になり続けることができるのです。入所すればずっと滞在できる「特別養護老人ホーム」(特養)がどこも満床で、1年や2年の空き待ちは当たり前、空いたとしても街から遠く離れた山奥にある特養などにしか行くことができないという状況はみなさんご存知だと思います。これに対して、介護保険の普及で街の中にどんどんできてきたのが「老健施設」(介護老人保健施設)です。しかし、この老健施設には、利用が3ケ月から6ケ月までという制約があるのです。しかし「ショートステイ」をうまく利用すれば、同じ老健施設に何年もお世話になることができるということがわかりました。

 

老健施設の利用は、3ケ月から6ケ月まで。だから入所してから半年たつと、別の老健施設に移動しなければいけない。実際、そのように老健施設を次々と渡り歩いている人は多くいると聞きます。また、現実にはさまざまな事情で1年以上、同じ老健に入所し続けている人もいますが、きちんとした制度で堂々と1つの老健施設を何年も利用することができる。それが「ショートステイでの長期利用」だったのです。

 

ショートステイなどを利用しながら自宅介護。桜の季節、家族そろって近所の桜の樹の前で=2012年4月15日、撮影・橋本正人

ショートステイなどを利用しながら自宅介護。桜の季節、家族そろって近所の桜の樹の前で=2012年4月15日、撮影・橋本正人

 

1カ月に約15日以上利用すると、「自宅介護が中心」とは言えなくなるため、老健の利用は1カ月に約15日以下にする必要があります。つまり、1週間に2泊3日であれば、1カ月の利用は約12日間。これだと老健施設を利用している日数より、自宅で暮らしている日数の方が多いので、ショートステイを繰り返していても「在宅介護」となり、老健施設利用期間の制限がなくなるのでした。

 

老健施設は、ショートステイのためのベッドの枠を設けていますが、お盆の時期や年末年始、そして土日祝は利用者が多くなります。自宅で介護している家族が休日に遠出をしたりするために、その期間だけショートステイを希望する人が多いためです。ということは、その逆、平日であれば、ショートステイ用のベッドが空いている可能性が高いわけです。ショートステイの予約は2ヶ月前からしか取れず、最初は予約をとるのが大変でしたが、2カ所の老健施設を利用する形でスケジュールを調整し、両方を毎月利用しているうちに予約も取りやすくなってゆきました。ショートステイが混雑するお盆やお正月は、ショートステイを利用せずにずっと自宅で介護できるように、私の勤め先の休暇を調整しました。

 

父の1週間のスケジュールを具体的に説明しますと、月曜日の午前中に老健施設からお迎えがきてショートステイに出発。月曜と火曜の夜はショートステイ先の老健でお泊まり。ショートステイ先では、滞在する3日間のうちに、肛門に指を入れて便を取り出してもらう「摘便」(てきべん)を1回と、入浴を1回、してもらいます。水曜の午後に老健から帰宅。木曜日は、週によって訪問リハビリや訪問歯科・訪問入浴が入り、金曜日は隔週で主治医が訪問してくださるほか訪問看護の方に摘便をしていただき、土曜は午前中にデイサービス(日中だけのサービス)に出かけて昼食と入浴をして夕方に帰宅。ヘルパーさんらの人手が少なくなる日曜日は「家族介護の日」として、父は1日中自宅にいて、家族だけで3食と摘便の介護をする、というスケジュールでした。

 

横になって湯船に入れる装置を自宅に持ってきてくれる訪問入浴サービスを受ける=撮影・橋本正人

横になって湯船に入れる装置を自宅に持ってきてくれる訪問入浴サービスを受ける=撮影・橋本正人

 

この形であれば、火曜日は父は家には朝から晩までいないので、母も妻も自分の用事をしたり病院に行ったりすることができます。父には、「申し訳ないけれど、家族も週に1日は休まないといけないので、2泊3日のショートステイをお願いします」と説明して、父は「わかった」と納得してくれていました。

 

こうした介護スケジュールの組み立てには、ケアマネジャーさんが大活躍してくれました。ショートステイの予約取り、介護保険などの制度の利用説明と手続き、ヘルパーさんや訪問看護師の手配など、あらゆることでお世話になりました。そして、病院を退院する前には、病院内で「カンファレンス」(会議)を開いて、どのように自宅での介護体制を組むかについての打ち合わせをさせていただきました。「カンファレンス」という言葉をお聞きになったことがない人も多いかと思いますが、関係者が集まって退院後の対応を検討する会議のことです。病院内の1室に、病院でお世話になってきた医師(医師は忙しいので不在の場合もあります)と看護師やリハビリ担当者、そして帰宅してからお世話になるケアマネジャー・訪問看護師・ヘルパー・施設の関係者の方々に集まってくださり、帰宅後の態勢について話し合いました。

 

カンファレンスは、最初の退院の時だけではなく、帰宅後も父が体調を崩して長期入院したりした際には、その都度カンファレンスを開いていただき、入院時の様子の情報をケアマネージャーやヘルパーさんらと共有し、帰宅してからどういう点に気をつけなければいけないかなどの説明を受けました。

 

このようにして、父は頸椎損傷で両手両足が動かなくなってからの7年間を、ショートステイやデイサービスを利用しつつ、自宅で過ごし、2015年4月に天国に旅立ちました。最後の1年間は誤嚥性肺炎で入退院を繰り返し、ついに口からゼリー状の食物もまったくとれなくなり、それ以上の延命措置を望まなかった父は、食べられなくなってから1週間後に、眠るように亡くなりました。最後の日々、父は自分から話すことはできなくなっていましたが、耳は聞こえていました。そして長男の妻が歌う古い昭和歌謡を聞いて、笑っている父が動画に映っています。この歌を聴いてから約4時間後、父は長男と長男の妻が見守るなか、静かに息を引き取りました。

 

 

「在宅介護でショートステイの利用」といっても、なかなかそうもできない事情がある方は、もちろんとても多いと思いますが、こんなパターンもあると参考にしていただければ幸いです。

 

 

<アイデアニュース関係記事>
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<筆者プロフィール>橋本正人(はしもと・まさと) 1986年、産経新聞社入社。写真部員をへて記者となり、兵庫県警捜査一課などを取材。1990年、朝日新聞社に移り、宝塚歌劇を扱う「朝日新聞デジタル・スターファイル」などを担当。2015年、アイデアニュース株式会社を設立し、編集長に。趣味は声楽(テノール)。 ⇒橋本正人さんの記事一覧はこちら

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