「私と猫たち」(11) 猫引っ掻き病 | アイデアニュース

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「私と猫たち」(11) 猫引っ掻き病

筆者: 岩村美佳 更新日: 2016年3月28日

「猫引っ掻き病」を知っているだろうか? 昨年末、私は突如ひどい関節痛を煩い「リウマチ」と診断された。しかし、実は「猫引っ掻き病」だったという驚きの体験をした。ぜひ、広くこの情報を伝えたくその経緯を綴る。

「猫引っ掻き病」は、その名のとおり猫に引っ掻かれると発症することが多い病気で、特に、野良の子猫に引っ掻かれると発症確率が高いそうだ。ネコノミに寄生された猫が、ノミの糞便中に排泄されたバルトネラヘンセラ細菌を、グルーミングで歯牙や爪などに付着し、人間を引っ掻いたりすることで感染させてしまう。

はじまりは昨年9月。生後6カ月のゆず吉&びわ吉を保護したときのことだ。警戒心の強かったびわ吉を捕まえようとして、右手首をざっくりと引っ掻かれた。(詳しくは 「私と猫たち」(8)https://ideanews.jp/archives/14868 をご覧ください)帰宅してから傷口を大量の水で洗い流し、傷パッドを貼った。傷跡を残したくなくて、傷パッドを貼ったが、これが病を悪化させた最初の原因だと思う。猫に引っ掻かれることに慣れてしまっていて、今までは傷パッドで痕を残さずに治してきていた。

野良猫時代のびわ吉&ゆず吉。駐車場にて=撮影・岩村美佳

野良猫時代のびわ吉&ゆず吉。駐車場にて=撮影・岩村美佳

一週間後には傷口がほぼ治ってきていた。ところが、一箇所赤く丸く隆起していた。直径7〜8ミリ程で、少し柔らかいような感じ。今までできたことはないような状態だった。膿があるのだろうかと様子をみたり、今更ながら消毒したり。この状態を「丘疹」というそうだ。見た目はやけどの後のような感じだった。傷が残ってしまったが、もう治っただろうと思っていた。まさか未だに病が進行しているとは思っていなかった。

次の症状は10月中旬。右脇のリンパが腫れていることに気づいた。見た目にはわからないのだが、脇の下にゴルフボールが入っているような感覚だった。乳がん検診は定期的に見てもらっていたので、急に大きくなるなんてないだろうし……と考えること1週間。今度は突然体調を崩して嘔吐した。思い当たることもなく、疲れだろうかと思った。

11月に入って、リンパが腫れたのも同じ右手だし、もしや、これはびわ吉に引っ掻かれた傷と繋がっているのではないかと思った。「猫引っ掻き病」は聞いたことがあったので、ネットで調べてみると、傷が赤く隆起し、リンパが腫れると書いてある。風邪のような症状が出ることもあるらしい。これはもう間違いないだろうと思い、今更ながら病院に行こうと思ったその夜、両膝に赤い斑点のようなものができていて、さらに熱いことに気づいた。しかも膝が少し痛い。今度は何!? 体験したことがない、いろんな症状がたたみかけてきて焦った。

両膝に赤い斑点が突如現れた=撮影・岩村美佳

両膝に赤い斑点が突如現れた=撮影・岩村美佳

翌朝起きると、今度は立ち上がれない程に両膝、両足首が痛かった。突然老人になったような感じで、手の力で何とか立ち上がるといった状態だった。どこの病院に行こうか迷ったが、引っ掻かれた傷と皮膚の赤い斑点なら皮膚科だろうかと行ってみることにした。診てもらう頃には膝の斑点はほぼなくなっていて、手首の傷と、足の痛みのみの状態だった。

猫に引っ掻かれたことを伝え、リンパの腫れや膝の斑点、関節の痛みを伝えたが、斑点は消えているし、膝の痛みは何だろうかわからないといわれた。大人は多くの人がヘルペスを持っているので、そのせいかもしれないとのことだった。手首の傷用に薬(ミノサイクリン塩酸塩錠50mg「サワイ」/アクアチムクリーム1%)を出してくれたが、膝の痛みはとりあえず保湿クリーム(ヒルドイドソフト軟膏0.3%)を塗ってみてといわれた。しかし、関節の痛みが解決せず、翌日、今度は整形外科で診てもらうことにした。

赤い斑点と、痛み、昨日皮膚科に行って猫の引っかき傷を診てもらったことを伝え、視診、レントゲン、血液検査、尿検査と行った。レントゲンで診ると、全く悪いところはないらしい。膝の痛み用の冊子をもらい、血液検査の結果を聞きにくるときまでこの体操をやってねと言われ、痛み止めを出してもらって帰ってきた。手首の傷は皮膚科で出された薬を飲み終える頃には治っていた。

痛み止めは効いたが、3日後にものすごく足がむくむ副作用が現れた。薬剤師さんと相談して、一度飲むのを止め、再度診察を受けにいった。その日院長先生が不在で、代理の若い先生が血液検査の結果をもとに話しはじめた。

最初のクリニック(整形外科・リウマチ科)での血液検査結果=撮影・岩村美佳

最初のクリニック(整形外科・リウマチ科)での血液検査結果=撮影・岩村美佳

「数値にはっきりとは出ていないのですが、おそらくリウマチだと思います。まずはこの冊子を読んでください。薬を飲みはじめてみましょう。」

「え!? リウマチですか!?」

「アザルフィジンEN錠500mgを出しますので飲んでみてください。」

寝耳に水か、晴天の霹靂か。想定外の診断にあっけにとられていた。聞いたことはあったけれど、老人になってかかりうるものぐらいにしか思っていなくて、信じられなかった。リウマチって一生つきあっていく病気だよね……。喘息も持っているのに、さらに増えるの? カメラ持ったりできなくなるのかな? マイナスな要素しか思い浮かばず、帰る道すがら涙が溢れていた。代理の先生だったこともあり、どこか信じられない思いもあった。他でも診てもらったほうがいいのだろうかと思い、医者の友人に相談してみようと思った。

最初に渡された冊子。膝の体操についてなど。(右)リウマチ診断後に渡された冊子。=撮影・岩村美佳

最初に渡された冊子。膝の体操についてなど。(右)リウマチ診断後に渡された冊子=撮影・岩村美佳

リウマチの薬を飲みはじめてすぐに関節の痛みがなくなってきた。このアザルフィジンEN錠500mgはめちゃくちゃ大きい薬。毎日飲むのもなかなか大変だった。正直なところ、撮影に支障をきたしかねないぐらいに関節が痛かったので、ほっとした。でも、その薬を出されたとき、「1〜2カ月ぐらい飲まないと効かない」と言われていたので、おかしいと思った。それから自分でもリウマチについていろいろと調べ、リウ マチは免疫系の病気だから、内科系で診てもらう方がいいという意見が腑に落ちた。セカンドオピニオンか転院か迷ったが、セカンドオピニオ ンには保険がきかないこともあって転院することにした。友人にリウマチ内科のある大学病院を紹介してもらい、紹介状をもらってくるようにと言われた。

アザルフィジンEN錠500mg。シャープペンシルと比べてこの大きさ=撮影・岩村美佳

アザルフィジンEN錠500mg。シャープペンシルと比べてこの大きさ=撮影・岩村美佳

2週間後に最初の整形外科に行くと、今度は院長先生が診てくれたが、やはりリウマチだという。そこはリウマチ科があり、院長先生はリウマチの名医でメディアにも出るような方だった。そんな先生に、他の病院でも診てもらいたいとは、本当に話しづらい。「どうぞどうぞ。いってらっしゃい」とはいうのだが、すすんで紹介状を書いてくれるわけでもない。結局、再度訪れたときに、意を決して「紹介状を書いてください」とお願いした。すると、「もう、そっちの先生に診てもらってね」と突き放され、目を合わせることもなく帰された。紹介状の殴り書きのような宛名をみれば、気分を害していることは明白だった。正直、何でこんなに気を使いながら診てもらわなければいけないんだろうかと思ったが、まだ終わっていない。年越しをはさんで、新年早々に大学病院を訪れた。

大学病院では、膝の赤い斑点から、膝の痛みについて、整形外科での診察内容や薬、経過について話し、今は痛みがないことや、血液検査の結果も見てもらった。すると、

「突然痛みが発症して、もう痛みが治まっていることを考えるとリウマチではないと思います。アザルフィジンEN錠を飲んで数日で痛みが治まるとは考えられないので。何かのウイルスではないでしょうか。小さなお子さんに会ったりしませんでしたか?」

「うーん……小さな子供に会ったりはしていないですね……」

「一応さらに詳しく血液検査をしましょう。来週もう一度きてくださいね。」

診察室を出て、「子供……子供……」と考えながら血液検査室に向かった。

「あ! びわ吉か!」

思い当たったのが猫だった。9月半ばに引っ掻かれてから、膝の痛みが治まったのが11月終わり。ひとつひとつの症状が時間をあけて出てくるので、全てが結びつかなかった。皮膚科と整形外科を訪れたとき、足の関節痛だけが切り離されてしまっていた。

大学病院(リウマチ内科)での血液検査結果=撮影・岩村美佳

大学病院(リウマチ内科)での血液検査結果=撮影・岩村美佳

翌週、再び大学病院を訪れ、「猫引っ掻き病」について先生と話した。リンパが腫れていると「猫引っ掻き病」は診断の候補に入るそうだが、医者も「猫引っ掻き病」を診察する機会が少なく、なかなか思い浮かばないことが多いらしい。もし、最初に皮膚科ではなく、内科を訪れていたら、早くに診断されていたかもしれない。また、ネットで「猫引っ掻き病」について調べたとき、関節痛の症状を書いてある情報と、書いていない情報があり、私も繋げて考えられなかった。

「猫引っ掻き病」に振り回された約4カ月。今は何の症状もない。最初に選ぶ病院や、医者とのコミュニケーション、医者任せにせずに自分でも考えることなど、学ぶ点がたくさんあった。もし、「リウマチではない気がする」と思わなかったら、飲まなくていい薬を今も飲み続けていたかもしれない。そう考えると恐ろしい。

そもそもの出発点はびわ吉。今は、我が家で飼い猫らしく生活している。あんなに嫌がっていたのが嘘のような、人間大好きの甘えたちゃんだ。この4カ月は大変だったけれど、びわ吉たちが我が家に来てくれて良かったと心から思う程、毎日楽しい猫生活を送っている。

現在のゆず吉&びわ吉。布団の上でリラックス中=撮影・岩村美佳

現在のゆず吉&びわ吉。布団の上でリラックス中=撮影・岩村美佳

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※次回の岩村美佳さんのエッセイ「私と猫たち」(12)は、4/25掲載予定です。

<筆者プロフィール>岩村美佳(いわむら・みか)  フォトグラファー/ライター ウェディング小物のディレクターをしていたときに、多くのデザイナーや職人たちの仕事に触れ、「自分も手に職をつけたい」と以前から好きだったカメラの勉強をはじめたことがきっかけで、フォトグラファーに。「書いてみないか」という誘いを受け、未経験からライターもはじめた。現在、演劇分野をメインに活動している。世界で一番好きなのは「猫」。猫歴約25年。 ⇒岩村美佳さんの記事一覧はこちら

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