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「サマーワでなく、ファルージャに行くというのが実感」 柳澤協二さん講演全文(2)

筆者: 橋本正人 更新日: 2015年7月14日

 

<「柳澤協二さん講演全文(1)→https://ideanews.jp/archives/5559」からの続きです>

 

で、法律の中身ですが、グレーゾーンと言われているところですが、これはさっき申し上げたように有事でないのに有事を呼び込みかねない法制だということです。

 

自衛隊法、ここでも覚えていただく必要はないんだけれども、自衛隊法第5条という規定がある。これは自衛隊ができたころ、世の中、日本はまだまだ政情不安定でしたから、暴徒が押し寄せて武器庫を襲われて武器を持っていかれては困るから、そのために必要な時は自衛官の判断で武器を使ってもいいという規定があるんですね。ところが、今度は95条の2という条文をつけ加えることによって、アメリカの船もそうやって守る対象に含めてしまうということが言われています。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

そうすると今まで国内の話だったのが、おおやけの海の上でアメリカの軍艦を襲ってくる相手はそれなりの覚悟をもって襲ってくるわけですよねえ。その、そこらのちょっとしたテロリストではやれないようなことです。それを自衛隊が武器を使って守ってやる。客観的には、これってねえ、戦争ですよ。それを、これ現場の判断になっちゃうわけですよねえ。国会承認もいらない。そして飛んでくるミサイルを落としていいかなんて、そんなことをいちいち防衛省や防衛大臣や総理官邸に問い合わせるわけにもいかない。現場の判断で、こういうことをやる。そうするとどういうことになるか。つまり国民が知らないうちに、もしかしたら急にある日、新聞の見出しに「わが自衛隊は、南シナ海・南方において中国海軍と交戦状態に入れり」みたいなニュースが飛んでくるかもしれないということですね。

 

戦争ってどうやって起きるか。我々も経験してるんですけど、盧溝橋で1発弾が飛んできたということを口実にして、日本軍は中国全土に戦線を拡大してゆくわけですね。第一次世界大戦だって、1発の銃声でオーストリーの皇太子が暗殺されたことをきっかけに、ヨーロッパを巻き込む戦争になってゆくわけです。

 

現場で、現場の判断で行われる1発の武器の使用というのは、非常に重大な結果をもたらす可能性があるということですね。そういう法案が入っているということです。

 

それから準有事といいますか、以前、周辺事態と言っていた、その「周辺」という概念をはずして「重要影響事態」ということに改正するという法律なんですが、当然、それで周辺以外にも使えるようになるということですが、その地理的範囲だけではなくて、もっと大きな問題は自衛隊の活動区域が今までは「非戦闘地域」と言ってた、今度は「戦闘の現場以外ならできるようになる」ということですね。これは本当に、もう何度も議論が行われていますけれども、非戦闘地域ってたしかにややこしかったんですね。

 

イラクで自衛隊が活動している時も、私の当時の上司であった小泉総理大臣は「自衛隊のいるところは非戦闘地域なんです」とね(会場笑)、名(迷)答弁をされたわけですが、そこの判断は難しい。地上は勝手にテロリストが侵入してくるので、なかなか難しいことはある。しかし、私の実感として言えば、自衛隊のいたサマーワは、たまに砲弾は飛んできた、時々、市街地で銃撃戦はあった、しかし日常的に戦闘・交戦状態があるわけではないという意味では、私は非戦闘地域と言っていいと、自分は実務者としてはそう思っていました。

 

一方で、当時、激戦だったファルージャという街がありますね。ご案内と思いますが、今でも危ないところですが、それから今はイスラム国と争奪戦が行われているモスルというような街とかね、ああいうところは戦闘地域そのものですね。なぜならアメリカが掃討作戦をやっているわけですから。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

だから、実感として言うと、非戦闘地域、たしかにややこしい概念ではあるが、戦場からできるだけ遠ざかろうという意識はあって作ったんですね。戦場から遠ければ遠いほどいいんです。しかし今度はそれをやめてしまうってということは、つまり、ファルージャにも行けるってことだよね、というのが実感です。ファルージャに行ったら、それは、いくら今、弾が飛び交っている戦闘が現に行われていなくたって、それは危ないでしょうということですね。

 

ところが、政府はなかなか危険をはっきり言おうとしません。はっきり言おうとしないけれども、法律を読んでみると、危険を前提にした条文がちゃんと入っているんですよね。それは何か。アメリカ軍などと一緒にいる共同宿営地に対する攻撃に対して、武器を使って反撃していいという規定が入っている。共同宿営地って基地です。基地が攻撃されるようなことを想定した条文が入っている。しからば基地を離れてトラックで弾を運びにいく部隊はそれより安全か。安全なわけないんです。そういう自分で出している法律も読んでないんじゃないかというぐらいのレベルの議論になっているということですね。

 

さらに一番上の一番右端に書きましたが、今までは弾薬の提供はできなかった。あるいは発進準備中の航空機に対する給油はしないことになっていた。今度は、それをやるということですね。これは明らかに、一番下に書きましたが、1986年にアメリカがニカラグアという国に軍事介入した、それについての国際司法裁判所の判決があります、そこでいわゆる兵站(へいたん)支援をするというのは武力攻撃とまでは言わないけれども、支援した国は武力行使をしたことになるという判断が示されているですね。もう、それを今までは非戦闘地域、少なくとも相手の弾は絶対飛んで来ないよねというところ、あるいはこっちの飛行機がそっから直接、あるいはこっちの部隊がそっから弾を撃つことはないよねと、そういう地域だったのが、そこを外して、弾を運ぶ。しかも、これから飛んでって爆撃するような飛行機に、油積む。これって武力行使そのものですよね。ここまでやると、ニカラグア判決的に言えば武力「攻撃」の一部ですらあると言えるんじゃないか。ということで、憲法との関係で、これはどうしてもやれないだろうと、私は実感として思うんですね。そういう中身になっている。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

それから、ちょっと外れますが、今度はアメリカ支援ではなくて、国際秩序の維持という文脈で2つの流れがあります。ひとつは「恒久法」といわれる、これは「国際平和共同対処事態法」というなんか、どう定義していいかわからない漢字の言葉をたくさん並べて、ほんとに趣味悪いわと私は思うんですけれども、これがいわゆる恒久法と言われるやつです。今までは、その都度法律を作ってインド洋で給油をしたり、イラクで人道支援をする、それに対していつでもやれるようにするという意味での恒久法ができるわけですね。その中で支援対象になる軍事行動というのが、非常に敷居が下がってるということだけ申し上げたいと思います。

 

たとえば、911後のアフガン決議と言っていますが、911で国連安保理が決議をしたのはアフガニスタンの政権に対してビンラディンの身柄を引き渡せという決議だったんですね。それにもかかわらず、アメリカは自衛権行使だといって戦争を始めた。そのあとの国連決議では自衛権を使うこともしょうがないよねっていう、事実上追認するような決議が出ているんですね。そういうことがあれば堂々と支援ができるということに、今度の法律で、なる。あるいは国際社会の平和と安全への脅威だと認定すれば、今、北朝鮮が認定されてますが、だから経済制裁をしようという決議です。イラク制裁もそうです。イラクの化学兵器の査察に応じないのは国際社会への脅威だから査察に応じろという決議があった。しかしアメリカは武力行使をした。今度は、それは「国際社会の平和と安全への脅威」と書かれているから、そういう武力行使も支援していいんだと、そういう法律になっているということですね。

 

これによって何ができるか。多国籍軍、あるいは有志連合への支援がほとんどの場合、できるようになるということです。現に、安倍総理も国会で、アイシル(ISIL)、イスラム国を攻撃する軍隊への後方支援は、「政策の問題として」やらないと言っている。政策の問題としてやらんというのは、つまり法律上はやれるようになるということを認めているということであります。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

もうひとつの国際秩序維持の文脈で出てきているのはPKO法の改正です。これは他国の軍隊に対する後方支援ではなくて、自衛隊が主役として入っていく活動なんです。ここでもいろいろ細かいことを書きましたけれども、国連が行うPKOだけでなくて国際連携平和安全活動、これは私はひとことで言えば有志連合のことだと思います、それに参加できるようにする。そして住民の保護ができるようになる、駆けつけ警護ができるようになる、現地の軍隊の再建を支援できるようになる、こういう任務が付け加わってきています。

 

こういう場合、ふつうは紛争当事者が停戦に合意をして、PKOとか、こういう国際的なミッションの受け入れに同意するという条件がつくんです。そういう条件もこの法律に入ってますが、違う条件が入ってくる。なんだろうと思って悩んだのが「紛争当事者がいない場合」っていうのが書いてあるんですね。なんで紛争当事者がいないのに、どうして住民の保護が必要になるのか。紛争当事者でない武装勢力がいるからですね。紛争当事者というのは、国連が交渉の相手として認めた相手が紛争当事者ということです。そもそもそういうのを、はなから相手にする気がない武装勢力は、これではない、だからいくら停戦が合意されたとか紛争当事者が同意していると言ったって、やっぱり武装勢力はいるわけですね。

 

こういうところが、本当に要件として緩いし、本当に危険な状況。現地の住民にとって危険なんですから、そこに出ていく自衛隊にとっても当然危険ということだと思いますけど、そういうことができるようになる。結果として、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争、そういうものに参加しないと総理は言っているけれども、後方支援部隊は送ることはできるんですね。後方支援というのは、さっきも申しあげたように武力行使ですから参戦なんですね。戦闘部隊は送らないけれども後方支援部隊は送れる、そういう形でこういう戦争に参加できるという、そういう法制です。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

もうひとつは戦争が終わったあとの占領統治、これに当時自衛隊は道路を作ったりする仕事だけだった。しかし一方で、治安維持をやっている、隣でやってたのはオランダ軍、次にオーストラリア軍ですが、イギリスとかアメリカは掃討作戦をやってた。そういうことまで、まあ掃討作戦まで読めるかどうかはわからないけれども、そういう相手と戦うことを前提にしたミッションにも入っていくことができる、そういう法律だということであります。

 

<柳澤協二さん講演全文(3)に続く>
https://ideanews.jp/archives/5651

 

 

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<柳澤協二さん関連記事>

柳澤協二・元内閣官房副長官補の講演「安保法制と日本の将来」 全文(1)
→ https://ideanews.jp/archives/5559

「サマーワでなく、ファルージャに行くというのが実感」 柳澤協二さん講演全文(2)

→ https://ideanews.jp/archives/5615

「自衛隊の服務は、我が国・憲法・法を守ること」 柳沢協二さん講演全文(3)
→ https://ideanews.jp/archives/5651

「来年の参院選に向けて、民意の抑止力を」 柳澤協二さん講演全文(4)
→ https://ideanews.jp/archives/5668

 

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<アイデアニュース関連記事>

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柳澤協二・元内閣官房副長官補の講演「安保法制と日本の将来」 全文(1)
→ https://ideanews.jp/archives/5559

 

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<筆者プロフィール>橋本正人(はしもと・まさと) 1986年、産経新聞社入社。写真部員をへて記者となり、兵庫県警捜査一課などを取材。1990年、朝日新聞社に移り、宝塚歌劇を扱う「朝日新聞デジタル・スターファイル」などを担当。2015年、アイデアニュース株式会社を設立し、編集長に。趣味は声楽(テノール)。 ⇒橋本正人さんの記事一覧はこちら

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