柳澤協二・元内閣官房副長官補の講演「安保法制と日本の将来」 全文(1) | アイデアニュース

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柳澤協二・元内閣官房副長官補の講演「安保法制と日本の将来」 全文(1)

筆者: 橋本正人 更新日: 2015年7月14日

 

2015年7月6日に、大阪市内のエルおおさか・エルシアターで行われた「戦争法案を廃案に! 『戦争する国』NO! 大阪大集会」(戦争をさせない1000人委員会主催)で、「安保法制と日本の将来」と題して講演した元防衛省幹部の柳澤協二さんの講演内容全文を掲載します。柳澤さんは、元防衛省防衛研究所長で、小泉・安倍・福田・麻生政権で内閣官房副長官補として安全保障・危機管理を担当。現在、国際地政学研究所理事長、「自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会」代表で、国民安保法制懇メンバー。第2次安倍政権の「憲法解釈の見直し」に、批判的立場で発言を続けています。この講演は平日(月曜)の夜にもかかわらず、定員801人の会場が満席となり立ち見も出る熱気の中で行われました。

 

【司会者】本日は安保法制と日本の将来ということで、元内閣官房副長官補ならびに防衛省幹部でいらっしゃいました柳澤協二さんにご講演いただきます。それでは柳澤さん、よろしくお願いいたします。

 

【柳澤】こんばんは。柳澤です。このところ関西に来る機会がおおございまして、大阪は5月3日に集会が、その足で京都に行ったりして、この前は大阪のテレビに生で出させていただきました。朝日放送の「正義のミカタ」という番組だったんですが、まわりの人たちがあんまりしゃべりすぎるもんですから、私の当初の時間が10分ぐらい少なくなって、また不満を残して来させるのも手かなと。

 

安保法制、今、国会で審議されてます。7月の1日に委員会の参考人ということで5人呼ばれたうちの1人、民主党の推薦で行ってまいりました。私はそこで15分しかないので、何を言ったかというと、とにかく審議がまったく尽くされていないと。政府の説明がまったくなっていないし、それから憲法論やら存立危機事態とか、ペルシャ湾なのか米艦護衛なのかということも行ったり来たりしている。それだけではなくて、もっと私が議論しなければいけないし深刻な問題がたくさんあるんだよ、という話をしてきました。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

どこまで通じるかですが、さっき澤野先生(大阪経済法科大学教授・「戦争をさせない1000人委員会・大阪」呼びかけ人共同代表)の話にもあったように、ここで潮目が変わりつつあると思います。私は、国民安保法制懇というものを東京でやっていまして、明日もうちわで会議をしてきます。小林節さん(小林節・慶応大学名誉教授・憲法)とか、早稲田の長谷部さん(長谷部恭男・早稲田大学教授・憲法)とか、この方たちが憲法審査会でそろってこの法案は違憲と言って、そこでメディアが注目したんですね。私に言わせれば、去年の7月にとっくに注目しとけよという気がしたんですけどね。

 

さっきも名前が出た辻元清美さん(衆議院議員)の国会質疑で、官房長官に対して「じゃあ賛成している憲法学者って何人いるんですか? 名前上げなさい」って言ったら、3人しか上がらないわけですね。3人しか上がらないと聞いてね、私はちょっと思い出して、うちの長男が中学高校の時、長男に「お前なんでそんなことするの?」と聞いたら「だってみんなやってるもん」と言う。「みんなって誰だ、言ってみろ」って言うと、「あの子と、その子と、この子」と、3人しかあがらないんですよね。「お前の全校生徒は何百人いるんだ」って。官房長官の答弁を聞いていて、それを思い出しました。

 

なぜまたこんなことを思い出して、ここであらためて言うかっていうと、こういう話に関心を持って聞いてくださるのは、だいたい私と同年配の「そこそこの若者層」(会場笑)が多いわけです。いつも、質問の時間がくると必ず出てくる質問に「われわれはいったい何ができるんでしょうか? 何をすればいいんだろうか?」ということですね。それは、我々はもう、そこそこ「じじい」だけど、私よりもまたひと回りも上のじじいがね、亀井静香(衆議院議員)さんとかが声を上げてるんですから、あんまり自分がじじだと思っちゃいけないのかもしれないが、若者を1人ずつ変えればいいんじゃないかと。だって、年寄りの方が圧倒的に人数多いんだから、1人でいいから変えなさい。それが一番できること。

 

そのためにはどうしたらいいか。自分の言葉で語ることなんですね。そのために人生経験積んできてるんだから、そこで若者1人変えるだけのメッセージを出せないとしたら、私も含めてですよ、われわれの人生、70年近い人生っていったいなんだったのかな。なんであったのかなということが問われる、そういう問題なんだ。これはもう1人1人の自分の人生の問題、人格の問題として、難しい理屈なんかいらないんです。自分の心で語る。それは必ず伝わると、私は思います。そうやって国を変えてゆくということだと思います。そういうことに私も70近くなって、ようやく気が付いたということです。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

今日は、法律の話、法律の中身を中心に、みなさんにご紹介します。私は、当たり前といえば当たり前ですが、この法律を読みました。全部で、A4で3センチちょっとある重たい資料なんですね。内容がじゃないです、目方が重たい資料なんですね(会場笑)。改正法案が、ずら~~っと、改正するところしかつまんで書かないもんだから、それだけ読んだって全然わかんない。新旧対照表で、照らし合わせる。しかし改正しないものとの関連があるから、そこをまた見なきゃいけない。それは参照条文というのがある。そんなのが資料として合わせて3センチちょっとになるんですね。

 

昔、自分の商売道具として使っていた法律なんだけど、あらためて読んでみると、こういうややこしい書き方してるのかと。これじゃあ、わかるわけないよねって思いながら、読んでます。今日は、そのさわりをお伝えしたいと思います。

 

安保法制、新しい新法1本と、おもな法律10本の一括改正法という構成になっています。これは、つまりなんだというと、平時から有事にシームレスに拡大してゆくアメリカの軍事行動についてゆくということがひとつ。もうひとつは、アメリカが例えばイラク、アフガニスタンで武力行使をする、それにも後方支援でついてゆくようにする。そして、戦争が終わって占領統治をするようになる、それにも今度は参加できるようにするという、そういう法律だということであります。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

もうひとつの特徴は、日米新ガイドライン、これの実現のための法律だということですね。4月の末に、新ガイドラインというものが合意されました。安倍総理はその直後にアメリカに行って、オバマさんとの間で、「これは日米関係にとって歴史的な転換である」。ほんっとに、私はねえ、こんなこと、ありうるはずのない歴史的転換だと思います。そして、そのあと、アメリカの議会で公約していくわけですね。「これを実現するための法制度を今年の夏までに作ります」と、2度にわたって言ってるわけですね。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

これはだから、対米約束が先行しているというのが、今回の安保法制の非常に大きな特色であります。で、その対米約束である日米ガイドラインの中で、1つだけ注目することを言います。「平素から計画を一緒に作ろう」と書いてあるんです。私も97年のガイドライン見直しというのを防衛庁の実務担当者としてやりましたけれど、その時は朝鮮半島有事。当然米軍は日本の基地を使って兵力を送り込んでくるわけですから、アメリカのやることもだいたいわかっている。だから日本が何をするかということも、ほとんどわかっている。そういう状況の中で、憲法の中でできるかという作業をやったわけですね。

 

今度は世界中のどんな事態にも対応できるようにするということです。つまり、何事態かがわからない。ホルムズ海峡機雷事態なのかもしれないし、中国がフィリピンの島を取りに来る事態かもしれないし、北朝鮮が悪さをする事態かもしれない。そういうことについての1つ1つの計画を、平時から作っておきましょうということが書いてある。そうすると、どういうことになるか。いざ、そういう事態が起きる、アメリカから「計画あるよね、あの通りやろうね」って言われて、そりゃ断るわけにいかないでしょってことです。日米同盟強化のためにやってることだと言ってますから、そうやってアメリカの期待値を上げておいて、いざとなってできませんと言ったら、これはもう本当に。みなさん、ご家庭で、ご夫婦の間でも良くあると思います。なまじ期待値を上げないほうがいいですね。あんまりやる気がないなら。期待値上げて落とすというのが一番良くないやり方。ということで、結局断れないだろうと。

 

断れないもう1つの、私がそう考えているのは、日本政府はアメリカの武力行使に反対したことはないんですね。その反対したことがない理由。国会の答弁の中では、すごく印象深く残っています。99年の周辺事態法の審議の時に、アメリカを後方支援するわけですから、アメリカが違法な武力行使をした時に、それを後方支援する日本も違法なことをすることになるんじゃないの、という質問に対して、外務省起案の答弁は「アメリカは違法な戦争はしないんです」という答弁なんですね。なぜしないのか。日米安保条約に国際法を守ると書いています。その日米安保条約にアメリカはサインをしています。だからアメリカは国際法を守るという安保条約の内容を守るはずです。それを信じないと同盟は成り立たないんですという説明ですね。

 

これはね、説明じゃないんですね。私はそう信じてますというだけです。そういう発想でアメリカが要請してきた時に、断るという発想にはよもやなりようがないという日米関係、特に今回、安倍政権がやろうとしていることは、それをさらに深めようとしている、そういうことですから断れるわけがないと私は思っています。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

そこで、安保法制全体を見て、いろんな変化が、まさに歴史的な変化が訪れようとしています。ひとつは、地球の裏側でもやれるようにするという地理的な範囲の拡大の話が言われています。これも非常に大きなことではあるんですが、私がもっと注目しているのは内容なんですね。質の変化です。たとえば武器の使用。今まで我が国の自衛隊は海外に行ったら、万一自分が襲われたらギリギリのところで自分の身を守るためにだけ武器を使うことが許されていたんですね。それを今度は、現地の住民を守るためとか、各国の軍隊が襲われているのを駆けつけて守りにいくためとか、あるいは治安維持をやる時に検問をしたりパトロールをしたりする。あるいは途中で邪魔する奴がいたら武器を使って蹴散らしてもいいとか、つまり武器の使用の仕方が、ほかの国の軍隊と全く同じになっちゃうわけです。これは実はもう自衛隊の歴史にない、ものすごい転換ということです。

 

自衛隊は海外で、よその国の軍隊と同じ仕事をできるようになる。同じ武器の使い方をするようになる。もうひとつは、やはりこれも武器の使用ですが、今度の法律の中で、平時からアメリカの船を守ってあげられるようにするという規定が入っています。今までは、日本有事の場合に日本を一緒に防衛するアメリカの船を守るのは個別的自衛権の範囲だよねというのが、中曽根政権の時の政府の見解で示されていました。今度は、日本有事になるはるか手前、平時であってもそういうことができることになる。

 

これは、安保法制懇の報告書の中では、これは集団的自衛権になっちゃうよということは言われていた。それを今度は自衛権の問題ではなく、平時の武器使用という非常に、あたりさわりのないように見えるような法案でそれをやれるようにしてしまっている。これはある意味、有事から平時に強引に武器使用を前倒ししてしまうという効果がある。そういう変化を起こそうとする法制であります。

 

さっき申し上げた「自衛隊が軍隊になる」というのはどういうことかということです。これは皆さんがメモしないでいいように、難しい言葉をこの資料に出しています。だから忘れていただいて結構ですが、武力行使と武器使用という2つの概念があるんですね。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

武力の行使というのは、憲法9条1項で禁止されている「国際紛争解決の手段として永久に放棄する」と言われているのが武力行使なんですね。ところが、「日本が攻撃を受けた場合に限っては」自衛のために武力を行使してもいいではないかという解釈で政府はずっときていたわけです。武力の行使の定義ですが、武力の行使というのは国家の意志として人を殺傷し、またはものを破壊する行為なんですね。ところが武器を使えばやはり人を殺傷しものを破壊することになるんですが、それを武力行使とは言わない、海外では。なぜか。言ったら「海外で戦争する」ことになっちゃって、憲法9条では読めないからですね。

 

で、この武力の行使ということを引用している条文が、今の法律にも1つだけある自衛隊法の88条。防衛出動命令を受けた自衛隊は日本を守るために必要な武力の行使をすることができる。これは国家の意思でやることですから、主語は自衛隊なんですね。

 

ところが、海外における武器の使用、「海外で鉄砲を撃つ」のは「武力の行使」ではなくて「武器の使用」という風に規定されています。武器の使用であれば、主語は誰か。「自衛官は」となるわけですね。国家の意思ではないから。自衛官個人の意思として武器の使用が許されるという法律の立て方になっている。そこが軍隊と軍隊でないところの違いが将来出てくるにちがいないという感じがして。私が仕事をしていた時もこの条項、この手の条文はあったんで、あったけれどもなぜ矛盾に気が付かなかったかといえば、1発も撃ってないからなんですね。

 

今度、新しい法律ができて武器を使わなければいけない機会が格段に増えるわけですね。それで撃ってしまう。撃ったらどういうことになるか。一種の殺人の構成要件に該当してしまうんですね。広島の宇品の港でお巡りさんがシージャック犯を射殺した時に、殺人罪になるかどうかということが検察でちゃんと審査されたんです。これは正当な行為であったということで無罪になっている。今度、自衛隊だって同じことなんですね。自衛官個人の武器使用なんです。国家の意思じゃないんです。国家の意思でやるんだったら軍法会議でもってやらなければいけない。しかし、それはできない。なぜか。憲法が軍隊を許してないから、なんですね。

 

こういう矛盾が実際今までは使わなかったから出てこなかったけれども、今度、こういうところまで現場に矛盾のしわよせが行く。あるいは現場の人たちの人間がぶっこわれるのか、あるいはこういうことを平気でやるようになれば日本という国がぶっこわれる、日本国憲法がぶっこわれる、こういうことだろうと。私は実務者としての感覚で、感じるのであります。

 

<柳澤協二さん講演全文(2)に続く>
https://ideanews.jp/archives/5615

 

 

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柳澤協二・元内閣官房副長官補の講演「安保法制と日本の将来」 全文(1)
→ https://ideanews.jp/archives/5559

 

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<読者の声>

 

柳澤協二氏の全文を、公開してくださって有難うございます。断片的にメモしたりしていましたが、画面と全文で、じっくり理解することができています。感謝!です。

 

 

<筆者プロフィール>橋本正人(はしもと・まさと) 1986年、産経新聞社入社。写真部員をへて記者となり、兵庫県警捜査一課などを取材。1990年、朝日新聞社に移り、宝塚歌劇を扱う「朝日新聞デジタル・スターファイル」などを担当。2015年、アイデアニュース株式会社を設立し、編集長に。趣味は声楽(テノール)。 ⇒橋本正人さんの記事一覧はこちら

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