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「来年の参院選に向けて、民意の抑止力を」 柳澤協二さん講演全文(4)

筆者: 橋本正人 更新日: 2015年7月14日

 

<「柳澤協二さん講演全文(3)→https://ideanews.jp/archives/5651」からの続き、最終ページです>

 

なぜこういうことがまかり通るか。その背景にある認識に、こういうのがあるんですね。法案の閣議決定の時に、安倍さんがおっしゃていたことです。アメリカの船を守れるようにすれば、日米が強固であることが発信されて、そして抑止力が高まることによって戦争に巻き込まれることが絶対にないと、そういうことですね。これは、ひとつの論理なんですね。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

ところがこの矢印でつながっているところには、それぞれ別の答えがあるわけですね。安倍さんにとって一番都合のいい分かれ道を選んでいくと、戦争には絶対ならないという答えになる。しかし「絶対に」と言ったところで、すでにうさんくさいんですね。別の論理だってあるということです。矢印の分かれ道。別の分かれ道を選んでゆくと、アメリカの船を守る。そうするとアメリカを攻撃した国にとって日本が敵国になるわけですね。そうすると、なんだこしゃくなということで日本を攻撃してくる。そういうインセンティブ(誘因)が生まれてくる。となると日本が攻撃を受けて戦争になるということですね。

 

論理的にはどっちも同じ程度に成立する論理ということです。なぜ片方しか言わないのか、ということですね。安全保障って相手があることだし、必ず、自分の思い通りにならなかった時のことを考えるのが安全保障なんだけど。ホルムズ海峡に機雷がまかれれば大きな被害が出ないとは言えない、そういうこともないとは言えないからといって、憲法解釈まで変えようとしている人が、なぜ安全保障の基本的な考え方の筋道で自分に都合のいいことしか取っていかないのかと。そこが全く理解できないっていうか、そういう人なんだろうと思うんですけども。

 

なぜこういうことになってくるのか。日本という国はアメリカと同盟を結ぶことによって、アメリカの方が圧倒的に大きいわけですね。だいたい親分子分の同盟関係ということで言えば、子分の側が感じるストレスっていうのは、いつでも2つあるんです。親分から見捨てられるんじゃないかって、そういう不安がいつでもあるわけですね。もうひとつは、親分が行けって言ったら、今度の出入りに巻き込まれるんじゃないかってね。巻き込まれの恐怖、見捨てられの恐怖っていうのは、小さい国は必ず持たざるをえない。なぜか。戦争を決めるのは、大きな国の特権だからなんですね。

 

だから安倍さんは心配になって、アメリカがいざという時に来てくれるように、一生懸命血を流します。アメリカの船が攻撃されれば、日本が必死になってお守りします。だから来てくださいと言ったって、それを行くかどうかを決めるのはアメリカなんですね。そこのところは浪花節の世界じゃないんです。同盟ってのは愛情でつながっているじゃないんですね。夫婦なら多少ね、ここまでサービスをしたんだからってことが成り立つかもしれない。それが成り立たなければ、そりゃ破綻ということなんですが。

 

しかし、国と国との同盟というのは、国益の重なり合いで初めてできること。中国相手に、日本は中国を敵だと思っているかもしれない、アメリカは中国を敵だとはいっぺんも言っていない。けれども、中国がこれ以上のさばっては困るとは思っている。しかし日本が余計なことをして中国との戦争にアメリカが巻き込まれたくないとも思っている。こういうものすごく複雑な、国益のベクトルが重なり合っているのが今の時代。それをアメリカの船を守れば抑止力が高まって日本が平和になりますなんていうね、お花畑みたいなことを言ってたら。

 

さっき、憲法学では澤野先生は「砂川判決で集団的自衛権が導かれるという答案は落第だ」とおっしゃっていた。私は安全保障論の学生が、こういう論文を書いてきたら落第だと思いますね。なんにも証明されていない。反証がまったくないわけですから、安全保障論にもなっていないということです。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

さっき言ったシナリオがこれですね。ガイドラインが合意された時に、アメリカのカーター国防長官、わざと言ったのか、非常にはしゃいでましたね。「これで中国の南シナ海での動きを牽制できる」と言っていました。それが狙いだと思います。客観的にね。今、中国は南沙諸島というところで、サンゴ礁を埋め立てて軍事施設を作ってます。アメリカはこれは許さないというんで、今度は軍艦を出すぞと言っている。中国は当初は、それ以上飛行機は近づくなと警告していたけれども、最近になって「あ、あの工事、もう終わっちゃったから」と言っている。そういう駆け引きが行われているんですね。

 

そこで日本がいったい何をするのか。アメリカの船を守るということで、日本が撃っちゃったらば、今度は中国は、本気になっちゃいますよね。ほんとに戦争になっちゃうじゃないか。戦争になったらどうするか。南シナ海って遠いんですよ。むしろ中国からすればね。何百発も日本に届くミサイル持ってるんですから、西日本以西の米軍基地、自衛隊基地にミサイルの一発でも落としゃいいという話になる、なりかねないわけですね。それが巻き込まれというか、それがひとつの安全保障の現実ということであると思います。

 

ついでにもうひとつ、さっき「沖縄を返せ」という歌をリハーサルで歌っていたので思い出したんですけど、4月末の日米ガイドラインになんて書いてあったか。離島防衛は自衛隊が主体となって行うと書いてあるんですね。ちょっと待てって。沖縄の海兵隊の抑止力が必要な理由として、中国が離島を取りにくるかもしれないって言ってたじゃないか。ガイドラインには、それは自衛隊の仕事だと書いてある。そしたら、沖縄の海兵隊っていったいなにやるの、って話ですよね。

 

こういうところも結構、ガイドラインというのは軍対軍の文書で、わりに正直に書くところがあるんで、こういうところも使っていけたらいいなという風に思います。

 

これからの法案審議。とにかくリスクを語らなきゃダメ。でもそりゃリスクを語らないんですね。リスクを語ったら人気がなくなりますから。しかしながら、リスクを語らない政治のことを我々は通常、衆愚政治というんですね。国民が馬鹿だと思っているからリスクを語らない。わかってます国民はね。それをしっかり踏まえた上で、認めた上で、さっきの安全保障論で言えば、「国民のみなさん、今、大変な状態になっています。中国を抑止しようと思えば、あるいは北朝鮮を抑止するためには、こちらも強い姿勢をとります。そうすれば相手もミサイルの1発や2発は撃ってくるかもしれないし、自衛隊員は亡くなるかもしれないけれども、その程度の犠牲は覚悟してください。そういう覚悟、耐える意思があってこそ、日本の抑止力が高まるのです」と言うべきなんですね。

 

そう言えば、いい悪いは別として論理的には成り立つと、私は思います。しかし、そういう話をしてない。特に自衛隊員のわかっているリスクについて政治家が言わないっていうのはね、もう文民統制は成り立たないってことですね。主権者に対して、国民のみなさんの理解を得つつって必ず言うんです。何度も言ってます。得られないから言うんですね。なぜ理解ができないのか。リスクを語らないから理解ができないんです。単純な話です。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

そして審議は尽くされていない。私は80時間が短いとかなんとか言うつもりはない。しかし基本的なところで論点が出尽くしていない。そして基本的なところで、特に集団的自衛権の行使の要件について国民が納得していない、こうだったらもう何百時間やったって法律作っちゃだめだってことですね。そのために、「そりゃぁわからん」という答えが。今朝、私が東京で見たTBSの世論調査で、だいたいよそでも同じような傾向が出てますが、この法案について、政府が十分説明していると思うか。「思わない」85%。これはねえ、85%って、ものすごい数字ですよ。ギリシャの国民投票だって、せいぜい6対3ですよね。85%の国民が政府ちゃんと説明しろよと言っている。その時に、もう80時間まで審議すれば、そこそろころあいだからといって採決をして、いいわけがないということです。

 

そういう声を出し続けること。世論調査の数字を。ほんとうに、もうひと息だと思うんですね。そのTBSで、内閣支持と不支持の差が、今までになく一番縮まっている。支持50%、不支持48%ぐらいまで接近してきています。もうひと息だねと思います。そういうところで国民の声が持続的に国民の疑問・不満がぶつけられていくことが、「民意の抑止力」ということですね。

 

特に来年、参議院選挙があるんですから。この政権のもとでは、参議院選挙で勝てないねと与党に思わせる。そういう数字をどんどん出していくということが、この法案の成立を抑止する大きな力になるだろうという風に思います。

 

と言いつつですが、強行採決についてこういう言い方をよくしていますね。安倍さんもそうだし、与党の政治家もね。自衛隊も最初はほとんどの国民が反対をしていた。PKOだって多くの国民が反対していた。でも今みんな支持してるじゃない。そりゃそうです。なぜか。それはね、戦争してないからですよ。自衛隊ができたって、PKOに行ったって、1発の弾も撃ってない。1人も殺してない、1人も殺されてない。だから国民は支持するように変わってきたんです。

 

今度の法律は、1発どころではない。とにかく武器を使いまくらなければできない任務がある。場合によってはもう、場合によらなくても、相手を殺す、自分も殺される。そういうことができるようになる法律なんですね。今までと同じように、国民がそのうち諦めて支持に回るさ、ってわけにはいかないんですね。これはね。つまり、この人は、今まで支持されてきた土台を変えようとしているのに、今までと同じように支持が続くと思っている。それはあり得ないということです。

 

しかし、結局これは数の力で通っちゃうかもしれない。今度はいちいち国会承認という手続きが出てきますね。国会承認というのはね、今度の法律は3分の2、60日ルールと言われてます、衆議院が議決して参議院に法案を送って60日以内に参議院が採決をしない、または参議院が否決したという時には、ふたたび衆議院で3分の2の多数で可決すれば、法律になるということなんですね。それが間に合うギリギリのタイミングが20何日と言われています。

 

ところが、今度その法律で自衛隊を出す時に必要になってくる国会承認には60日ルールがないんです。だから与党になって苦労してました、私が仕えた福田総理もね、日銀総裁の人事が参議院で、ねじれ国会の参議院で否決されちゃうんですね。60日ルールがないから、衆議院に持ち帰ってもう一回議決するわけにいかない。だから国民の運動が続くんだったら、この法律のもとで抵抗する手段が与えられちゃうと。もちろんこの法律、なくしていくのが一番なんですけれども。

 

いずれにしても来年の参議院選挙で、こういうことをやった与党には、ぜひとも思い知らせなければいけない。国民には、その意思と力があるという恐怖によって、乱暴なことをさせないようにする。それが安全保障でいう抑止力の意味なんですね。そういう意味で、ともにというか、私は私の立場、みなさんはみなさんの立場、そしてさっきも申しあげた、年は取ってもまだまだ1人の若者を、1人でいいんだ変えていけばいいんじゃないか、そういうことで次の世代に、われわれの人生をつなぐという、そういう努力の一環としてぜひやって行きたいと思います。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

この話は、続くと思います。というのは日本は戦後70年間、護憲派は護憲派で憲法守れと言っているだけで、どのように国を守るかという対案を示していなかった。今度、変えようとしている人はね、そんなにやりたきゃ憲法変えるべきなのにそこの手順を踏まずに、とにかくアメリカにどこまでもくっついて行けば安全だという政策を取ろうとしている。そこの中身を議論してかなきゃいけない。日本がどういう国になりたいのか。どういう国だからどういう守り方をしたいのか。海外に行って何をしたいのか。

 

最後にひとつ、ついでに申しあげると、イラクに自衛隊が行ってる時に中東の専門家から聞かされた現地の人の意見を聞いた。自衛隊は歓迎なんです。なぜか。自衛隊が来れば、その次にはトヨタとか日産とか三菱とか日立が来てくれる。つまり彼らの日本に対する評価というのは、あの悪いアメリカに原爆を2つも落とされながら、経済大国としてよみがえった素晴らしい国だという認識なんですね。そして中東で1人も殺していないわけですね。

 

それがアメリカと同じことをやったら、その評判は台無しになっちゃう。国際社会に貢献する、国を守るだって、なにも力づくだけではないんです。ほかの手だて、何が一番日本の得意なところなのか、何が日本が一番価値を発揮できるところなのか。そういうところの議論を、もう一度、これからやっていく、そのための時間はまだまだあるといことですね。特に中東に行って、最初の1発目を撃つまで、まだまだわれわれには残された時間があるということで、息長く、お互いの新しい合意を目指して、そして今はとにかく、このメチャクチャな動きを止めるという、その短期的・中期的な両方の目標をもって頑張っていけたらなと思います。

 

ちょうど時間だと思います。ご清聴いただき、ありがとうございました。(会場拍手)

 

<柳澤協二さん講演全文おわり=取材・文責:橋本正人>

 

 

講演のあとで沖縄の歌などが披露された=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

講演のあとで沖縄の歌などが披露された=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

講演のあとで行なわれたアピールより=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

講演のあとで行なわれたアピールより=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

 

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<柳澤協二さん関連リンク>

国際地政学研究所 http://www.igij.org/

自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会 http://kenpou-jieitai.jp/

国民安保法制懇 http://kokumin-anpo.com/

 

 

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<柳澤協二さん関連記事>

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「自衛隊の服務は、我が国・憲法・法を守ること」 柳沢協二さん講演全文(3)
→ https://ideanews.jp/archives/5651

「来年の参院選に向けて、民意の抑止力を」 柳澤協二さん講演全文(4)
→ https://ideanews.jp/archives/5668

 

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→ https://ideanews.jp/archives/5559

 

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<筆者プロフィール>橋本正人(はしもと・まさと) 1986年、産経新聞社入社。写真部員をへて記者となり、兵庫県警捜査一課などを取材。1990年、朝日新聞社に移り、宝塚歌劇を扱う「朝日新聞デジタル・スターファイル」などを担当。2015年、アイデアニュース株式会社を設立し、編集長に。趣味は声楽(テノール)。 ⇒橋本正人さんの記事一覧はこちら

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