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「自衛隊の服務は、我が国・憲法・法を守ること」 柳沢協二さん講演全文(3)

筆者: 橋本正人 更新日: 2015年7月14日

 

<「柳澤協二さん講演全文(2)→https://ideanews.jp/archives/5615」からの続きです>

 

では、そういうことで自衛隊の隊員の安全は確保できるのか。できっこないという結論であります。これは、私はもうここが一番気になるもんですから、どこでもお話ししてます。官邸にいたのが2004年の4月から5年間でした。そしてほとんどの期間、自衛隊がイラクで活動していたわけですね。陸上自衛隊のいたサマーワというところは、比較的平穏なんです。自衛隊はそこで道路を直したり学校を直したりする仕事をしてたんですが、それでも時々、宿営地にロケット弾が飛んでくる。あるいはアイイーディー(IED)というね、路肩爆弾と言っていますが、道端に仕掛けておいて携帯電話で発信して爆破させるという、そういうので車が壊されたこともあった。これはもう本当に当たりどころが悪ければ何人か死んでてもおかしくないそういう状況であったと思います。それでも結果として1人の犠牲者も出さずに済んだんです。交通事故は何件かありましたけど。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

2006年の7月、陸上自衛隊が撤退する時、小泉政権の最後でしたけど、小泉総理が記者会見をするというので総理のところに資料を持っていって申し上げたのは、「一発の弾も撃たなかったことが大事なんですよ」ということを強調したんですね。なぜか。1発撃てば、まわり全部イラク人ですから、彼らを敵に回したら、サマーワの人口が3万人だったとすれば、1発撃ちゃ3万発返ってくる世界にいるんです、自衛隊は。武器を使えるようになるから安全じゃないです、ということを申し上げた。

 

小泉総理もそこを記者会見で強調してくれたわけですが、それでも帰ってきてから29人の隊員が自殺してます。インド洋に派遣された人の自殺が25人だそうです。両方とも、のべ1万人ぐらいの母数なんですけども、1万人の中で29人が亡くなるっていうのは、日本人の平均自殺率、約10万人あたり20人ぐらいなんですね。10万人あたり20人が日本人の平均。イラクに派遣された自衛隊、10万人になおせば290人という数字になります。これは明らかに大きな差ですね。それだけ大きなPTSDとかトラウマを抱えて帰ってきているんですね。これ以上のことやったらまずいでしょうというのが、私の率直な実感であります。

 

ところが最近、防衛省の後輩から、ちょっとお話ししたいというので聞いたら「先輩、そんなこと言ったって、一般の隊員が年間に80人自殺してるんですよ」。「それってお前、えばったことなのか」って話なんですけど。つまり彼が言いたいのは、イラクに派遣された自衛隊員の自殺というのは10年かけて29人亡くなったんでしょう、と。一般の隊員は今でも、毎年80人自殺してるんです。80人ってね、普通科歩兵部隊で言うと2個小隊ですよ。戦争もしてないのにね。それだけ2個小隊全滅してるような感覚で深刻な問題なんですけれど、ただ、それでも18歳から59歳までの隊員の平均値ですから、平均勤続年数20年の間に蓄積されたストレスによる自殺なんですね。イラクに派遣された人たちは平均して3ヶ月で帰ってきてるんです。3ヶ月のストレスの結果、10年たってもその傷が癒えていないということです。フラッシュバックがね、10年たっても続いてるってことです。

 

これから先も出てくるだろうと思います。これだけ深刻な状況にイラクに派遣された自衛隊員はあったというわけですね。武器なんか使ってないんですね、そして地元から感謝されたのに、それでもこれだけの思いをしているわけです。だからこれ以上のことを絶対やっちゃいかんと、私は思います。ところが安倍さんはいつもこれをおっしゃいますね。「自衛隊員は、ことにのぞんでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に勤めると言っている。だからやってくれるだろう」とおっしゃる。しかし、この冒頭になんて書いてあるか。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

「私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し」、そのためには命をかけて「国民の負託にこたえる」。これが自衛隊員の服務の宣誓なんです。私も防衛庁に入る時に、制服ではないけれども、これにサインして入ってます。そういう思い、なんですね。そういう思いを国民も支持してくれる、そして政府もずうっとそう思っていた。日本が攻撃を受けた時には自衛隊が立ち上がって守る、それが国民の負託であり、自衛隊の使命であり、政府の憲法解釈であったわけですね。だから自衛隊の支持は着実に高まっていったんだと思います。それを変えようとしているということが、私は、自衛隊シンパとして言えば、ここが一番大きな問題だと思います。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

それからちょっと横道に行きましたが、この法案の中の本丸と言うべき「存立危機事態」。今申し上げたように、今までの議会は、国民が納得していること、自衛隊が覚悟していること、政府が理解していることは、「我が国が」攻撃を受けた場合には、日本は自衛権を使って武力行使をして反撃するんだ、つまり戦争するんだってことです。そこはみんな一致してたわけですね。そういう日本が攻撃を受けたってことは、まあこれは事実のことですから、わかるんですね。ほとんど。わかるんだろうと思います。尖閣とられたとかね、北朝鮮からミサイル飛んできた、そりゃわかるでしょう。

 

今度の問題は何か。日本と密接な関係にある外国が攻撃を受けた。それは新聞を読んでりゃわかるかもしれない、しかし、それが要件じゃないんですね。それによって国の存立が脅かされた、あるいは国民の生命自由幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合と、こう、言ってるうちに最初に何を言ってたか忘れちゃうような、そんな要件がついているわけですね。それって価値判断の問題なんですね。明白な事実として国民が理解できることではない。政府が判断することによって、日本の武力行使が行われる。だからそれはどういうケースなのかということを、はっきりさせなさいということで国会で行ったり来たりの議論が行われているけれども、そこが全然わからないということですね。

 

つまり、立法事実がないということです。法律的に言うとね。ホルムズ海峡で機雷が撒かれた、しかし日本には半年分の備蓄がある、ホルムズ海峡を通らなくたって、パイプラインで外から積み出す手はいくらでもある、いよいよとなりゃほかの国から油買ってきたっていい。こないだ、北海道にいた時に聞いた話なんですけど、自民党の大物の先生が「半年備蓄があったってストーブが焚けなきゃ北海道の人は凍え死んでしまうだろう」。北海道の人の答え。「半年たてば春が来る」って(会場笑)。

 

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

柳澤協二さん講演より=2015年7月6日、大阪市のエルシアターで、撮影・橋本正人

 

ほんとにそういうようなことで、これが何だかということがわからなくなって、最近ではこれはあんまり使わなくなってきて、目の前で日本を守るために展開しているアメリカの船が襲われた時に、いつでも個別的自衛権とは限らない、そこは個別的自衛権が使えない隙間があるかもしれない、っていうことを言いだしたんですね。前は、ホルムズ海峡、はるか遠いところを望遠鏡で一生懸命見て大変だ大変だと言ってた、望遠鏡をはずしたらけっこう遠いところにあるねって話だったんだけど、今度はもっと近いところの話を言い出している。虫眼鏡で見ないと個別的自衛権と集団的自衛権の違いがわからないような議論になってる。

 

これはねえ、やっぱり前提に無理があるってことですね。無理がないと言うなら、国民が納得できるようなことをあげなきゃだめ。これが出てこない限りは、何十、何百時間審議しようと、こういう法律は通してはいけないということだと思います。

 

<柳澤協二さん講演全文(4)に続く>
https://ideanews.jp/archives/5668

 

 

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<筆者プロフィール>橋本正人(はしもと・まさと) 1986年、産経新聞社入社。写真部員をへて記者となり、兵庫県警捜査一課などを取材。1990年、朝日新聞社に移り、宝塚歌劇を扱う「朝日新聞デジタル・スターファイル」などを担当。2015年、アイデアニュース株式会社を設立し、編集長に。趣味は声楽(テノール)。 ⇒橋本正人さんの記事一覧はこちら

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